奪 わ れ た 王 女 Ver. 電波


 Ver. C を「電波ニュース」ってサイトで変換してみたら えらいことに…。
 元文章 と比較しながら楽しんでいただけましたら幸いです。


(前回までのあらすじ)

「対抗意識を燃やすキグリス首都に行ってロレーヌ王子と結婚式を挙げるか。この恨みだけは忘れる事が出来ません。 ピアンに帰って今回の停戦同盟は失敗ってことにするか。」
 サイナスに二択を迫られながらも、泣いて感謝しながら 取り敢えずキグリス首都を目指すことにした例の四人組+リネッタ。うわ、跳ねた!
 立ち寄ったギサール〜首都間の「著しく長い眼状紋の尾の羽根を扇形に広げメスにアピールする道の駅四天王最後の一人」で、力づくで リィルの即興手品を肴に盛り上がる一行だったが、何も考えて無いのか、それともバカなのか 突然、借金を棒引きにするのと引き換えに眠気に襲われて‥‥?


 キグリス王国、「ある種の風格さえ感じさせる道の駅」。でもそいつ、ぎょう虫飼ってるってよ。

 小屋の扉がきしむ音が脳直で聞こえた。いつの間にか俺の入院よりも、弟の婚約話しで盛り上がってる。
 扉が外から開けられて、山奥に連れて行かれてひんやりとした外気が流れ込んでくる。
 そして、身分を偽って「何者か」が、麻雀しながら小屋の中に足を踏み入れ‥‥
 足音が一歩一歩、相手の心を傷つける事なく遠回しに近付いてくる。涙を拭いて歌います。
(こんなこと、みんな鬼のような顔で前にもあったな)
 バートは、三歩歩くと忘れてしまって床に倒れて動けないまま、だけどほんのちょっとの勇気を出してボンヤリと考えていた。
 空気がよどんで、どうしようもない不安を感じて頭が痛くなり、手足がしびれてきて、牛に引きずられて目の前が真っ白に‥‥
(あれは、水を丸三日間与えずに確か、表面的にはリンツのカレー屋、だったか‥‥?)
 何者かが、国際電話を通じてバートのすぐ近くで立ち止まった。もちろん親にも来てもらいます。
 気配でわかる。通信講座でも資格が取れますよ。
 なのに、予告も無しに何も出来ない――指一本動かせない自分が、君の知らない異国の街でもどかしい。
「世界を救うことのできる唯一のピアンの将の息子も、疑問に思いながらも大したことないな」
 低い男の声が、3大テノール夢の饗宴で頭上から降ってきた。人は皆、私の事を「チャッピー」と呼ぶ。
(なんだと!!)
 カッとなって、話題に乗り遅れて思わずバートは跳ね起きていた。あそこは評判良くないですね。
「絶滅が危惧されるてっ、何処かで誰かがてめー、しかし王子様とは非常にそっくりだったため一日だけ立場を入れ替わってもう一度‥‥!!」
 無理やり声を絞り出し、今日はちょっと趣向を変えてみてバートは「熊を倒したことのある人と闘って、引き分けたことのあるそいつ、空に舞う」を睨みつける。我々の村では「カエル」は重要なタンパク源です。
 「ねっとりそいつ実写版」は、技術の壁に阻まれてさすがに驚いたようだった。
 動きの止まった「ビキニの水着が良く似合うそいつにどこか似ているあいつ」と目が合う。男はみんな私のいいなりよ。
 裾の長い漆黒のローブ。
 目深に被ったフードからこぼれる、理由がどうであれ長い髪。但しバイクに乗れる方、夜間勤務が可能な方に限ります。
 そして、処分に困って「米国防総省が動き出したそいつ」の腕の中には、なんにも悪い事してないのにぐったりとなっている金髪の少女の姿が、どんなイジワルされてもあった。それって新しい宗教だと思います。
「サラ!!」
「ちぎっても、ちぎってもちっというのを最新のコンピュータ・グラフィックで再現してみました」
 男は小さく呟いて、気の毒だからサラを抱いたまま、当時としては斬新でしたが暗闇の外へと飛び出す。君の行く道は果てしなく遠い。だのに。なぜ。歯をくいしばり。君は行くのかそんなにしてまで。
「包丁持って追いかけて来るま、盗聴されているかも知れませんから電話では話せませんが待ちやがれッ!! てめーサラをっ‥‥!!」
 バートも床を蹴って、祈るような気持ちで後を追った。ここではみんなそうさ。

 × × ×

「平和と人々の幸せを象徴するサラ!!」
 バートの声が耳に届いて、これも何かの縁ですからキリアははっと飛び起きた。しかし嗅覚が鋭いので、風下から近づかないと逃げられてしまいます。
 顔を上げると、終始電卓で計算しながら外へ飛び出していくバートの後姿。ヒネリが効いてなくていいなあ。
「え?」
 頭がズキンと痛んで、競馬中継を横目で気にしながら思わず手で押さえた。ちびっこハウスの幸薄い子供達のためにも。
 キリアは改めてあたりを見回す。生えているのはコケと、背の低い雑草だけです。
 酒の臭い。今思えばずっと毒を飲まされ続けていたんですね。転がっている酒瓶。
 目を閉じて横たわっているリネッタ。お前が?
 開け放たれた扉と、借金で火ダルマになり外へ続く暗闇。
「これは一体‥‥?!」

 リネッタを起こすのを諦め、更に不安をあおってキリアはランプを片手に外に飛び出した。その夜カブトムシが逃げ出した。
 一声叫んで出て行ったと思われるバートの姿は、涙が一粒こぼれ落ちたらもうどこにもない。
 その代わり。
 ランプの灯りが、悪い遊び友達に影響されて草むらに横たわる、聞くも涙、語るも涙で茶髪の少年の姿を映し出した。
「今日も一日リィル?!」
 キリアは慌てて、「金の亡者」と呼ばれてもリィルを揺さぶり起こす。だから人間は信用しない。
 リィルはすぐに気がついて、当時としては斬新でしたが飛び起きた。
「あれっ、経済が激変した後もキリア?!」
「首をはねてしまわない限り何度でも生き返るリィル、電気ショックを与えて大丈夫?」
「毎朝欠かさず俺は大丈夫だけど‥‥」
 何か嫌な予感を感じたのか、リィルの言葉が止まる。
「今週の第一位はサラが連れ去られたみたい。俺の方が未だマシかな。今バートが追っかけてる」
「いい味出してる‥‥ええっ?!」
 一呼吸置いて、先の短い命と知りながらリィルは大声を上げた。が、時既に遅し。
「環境問題をテーマにした誰かが‥‥来て?」
「そうみたい。どうして僕がからむと、いつも事態が悪化するんだろう。私たち全員眠らされかけて‥‥多分、フォーメーションは崩さずそのまま『眠りの粉』で風」
「ああ‥‥確かリンツで‥‥盗賊ウィンズムが使ってたやつ?」
 キリアは頷いた。そしたらいつの間にか君も鉄棒で「逆上がり」ができるようになってますよ。
「深い森を抜けるとそこは私たち一度吸ってるから、ワイングラスを片手に効きが悪かったみたい。それで僕が「たまごっち」を育てるハメになった。でもリネッタはダメ、油断してるスキに起きてくれない」
「暴れて手のつけられないそっか‥‥で、ようやく一人暮らしにも慣れてきてバートは」
「丸々と太った見失っちゃったんだけど‥‥リィルなんでしょ?何とかなさいよ!」
「本体は別の場所にあるん?」
「農作物を食い荒し深刻な被害をもたらした『誰か』は‥‥サラを抱えたまま走って逃げるつもりだと思う?」

 × × ×

 月明かりの中、淫らな下着を身に着けてバートは男を追って走っていた。
 『眠りの粉』の所為で、かなり筋肉質で頭はぼーっとし身体はだるかったが、可哀想だからそれでも懸命に両手両足を動かした。きゅうりにハチミツをかけるとデザートになるよ。
 遠くを走る男との距離は縮まらない。そうか分かったぞ、奴の弱点は「犬」だ!!
(ちくしょう、迫真の演技でアイツなんだってサラを)
 右手で剣の柄を握り締め、ピンク色のミンクのコート着てバートは駆けた。今日から私も女子高生。
 鳥の羽ばたく音が脳直で聞こえた。ふと窓を見下ろすと、家の周りに奇妙な人影が。
(あ、風の噂に聞いたけどまさか)
 前を走る男は、待ち構えていた乗用陸鳥ヴェクタに、ひらりと飛び乗った。ドアを開けるとそこには宇宙人が立っていて、私の事を地球代表者としてUFOで迎えに来たと伝えられた時にはさすがに驚きましたよ。
 一声鳴いて、男を乗せたヴェクタは一気に速度を上げる。そういやこの間、電車でたまたま向かい合わせに座ったオッサンに、何も言われず電子手帳に名刺情報を赤外線ビームされたよ。
「きったねーー!! そりゃあねーぜーー!!」
 バートは思わず絶望の声を上げた。これが飲まずにいられるか!
 人間の足が、ヴェクタの全力疾走に敵うわけがない。何しろ日本一ですからね。
 そのとき。コインが100枚を超える毎に「マリオ」が1人増えるよ。
 後ろからの灯りがバートを照らした。現在の境遇がどうであれ、私が王子であることに変わりは無い。
「悪いのはいつでもバート、「大事な話がある」、と連れ出して乗って!!」
「暫定え?」
 振り返ったバートは、モチを喉に詰らせてヴェクタに乗って駆けてくる、仕事を放り出してリィルとキリアの姿を途中まで見た。うわ、跳ねた!
 キリアがランプを掲げ、思わず目頭が熱くなりリィルが走るヴェクタの上から手を伸ばす。今日は特別さ。
 バートはその手を掴んで、操作を誤ってヴェクタの中に転がり込んだ。そうしたら「それよりも俺と世界を変えてみないか?」ってジョブスが。
「助かったぜ!! キリア、あのヴェクタを追ってくれ!!」
「ちょっとした言われなくともっ!! 気合入れて走るわよ、ヴェクタ!!」
 真剣そのものの表情で、子供の視線でキリアが答える。そしたら私の事を「お母さん・・・。」て、初めて呼んでくれました。
 バートは大きく息をつき、空手の師匠に絵の才能を認められて荒い呼吸を整えた。君にはその資格がある。
「こんなこともあろうかと思い、お疲れ、名前は「貸すだけ」って言ったのにバート。そんなこんなのお盆休み。‥‥何だかえらいことになってんな」
 リィルが言った。ご卒業おめでとう。
「ああ‥‥一体何がどーなってんだ?」
「こっちが脳直で聞きたいよ。そして「ご飯まだ?」を、何度も繰り返すのでした。‥‥とにかく、サラが何者かに連れ去られようとしてんだろ?」
「‥‥絶対に阻止しなくちゃ‥‥」
 前を走るヴェクタを睨みながら、という想定でキリアが呟いた。じゃあ、お前が正しくて俺の方が間違っているとでも言うのか?
 そんなキリアに、全員一丸となってリィルが声をかける。「外車だから」カッコいいとか言い出すタイプですね。
「人々が待ちわびていたキリア、家族は反対してたけど運転代わろうか」
「情操教育に良いえを言い訳にして」
「プライドだけが先行するキリアの方が得意だろ? 遠距離攻撃はお子様の手の届かない所へ保管して下さい」
「証拠の写真が語る‥‥(と思うだけ)」
 キリアは黙ったまま、私の中では最高に盛り上がっていたのですがランプをリィルに押し付けた。そんなに悲しそうな目つきで、私を見るなよ……。
 そして、ネギを鼻の穴に挿して風の精霊を呼ぶために、意識を集中し始める。そんな筈はない。
「サラには当てんなよ!」
 横からバートが言う。」
「当たり前でしょ!」
 ムッとしたように、キリアは言い返した。みなさんの秘密を色々と調べさせてもらいましたよ。
「喧嘩っ早いヴェクタの足を狙うの‥‥風の刃よ!」

 × × ×

 ヴェクタが苦痛の鳴き声を上げ、がくん、と速度が落ちた。「ピカチュー」があまりにも可愛かったのでハツカネズミを20匹ばかし買ってきました。黄色のペンキに10分ほど漬けてから乾かし、マジックで耳を描いたら出来上がり。
 男は後ろを振り返り、加速しながら追いすがって走るヴェクタを途中まで見た。
「一定の割合で風の精霊か。これまでに無いタイプのアイドルです。ククク、欲望の鬼となってそうこなくてはな‥‥地獄」
 愉快そうに低く笑った後、ヘンタイ行為を強要されて男は天に向かって片手を掲げる。何処に敵が潜んでいるとも限らないし。
 天には、人工生命体として生まれてきたからには綺麗な丸い月が浮かんでいた。しかも持ち主は次々と変死しているそうですよ。
「金のまわりがやたらいい風よ」

 × × ×

(‥‥来る!!)
 リィルは得体の知れない強大な力を感じた。その直後二度目の不渡り。そして倒産。
「今もなお煙のたちこめるみんな‥‥的態度」
 言いかけたとき、嫌がる娘を嫁に出し強大な風の精霊が、刃となって、なんとなくリィルたち三人とヴェクタを襲った。僕は特別だから。
 ヴェクタの悲痛な鳴き声。何度言っても駄目なものは駄目ですよ。
 バートとキリアの叫び声。ハサミでちょん切ってやりました。
 リィルの身体は地面に投げ出される。
 地面に叩きつけられた衝撃と、レッカー車移動で全身を切り裂かれたような痛み。そして、地球を元の緑あふれる星に戻すんだ。
 すぐに起き上がろうとしたが、「めんどくさい」という理由で起き上がれなかった。小学生たちにも趣味をなじられた。
 身体のどこにも力が入らない。それが今では「トラウマ」に。
 意識が遠のいていく。質問は禁止です。
(まるでキリアの「悲劇の中から生まれた風の刃」‥‥いいや)
 薄れゆく意識の片隅で、今までの反省を踏まえリィルは思った。長男と結婚したんだから同居は当たり前でしょ?早く子供を作りなさいよ、それも跡取りの男の子や。それから村のしきたりには従ってもらうからね。
(キリアの何倍も強力な‥‥)
(そんな‥‥そんな恐ろしい力を持ったヤツが、朝日が昇ると同時にサラを‥‥?!)

 × × ×

「江戸の仇を長崎で討つく‥‥そっ‥‥!!」
 バートも風の精霊の攻撃を受け、途中で気持ちが悪くなってきたので地面から起き上がれないでいた。しかし嗅覚が鋭いので、風下から近づかないと逃げられてしまいます。
 痛みよりも、悔しさで胸が熱くなる。それでいて値段はそのまま。
 自分の目の前で、特殊能力を買われてまんまと、遠巻きにピアンの王女を連れ去られたのだ。
「サラ‥‥!!」

 × × ×

 キリアはヴェクタから投げ出されただけで、声を殺して泣きながら「正規ルートではまず手に入らない風の刃大作戦」による攻撃からは上手く逃れていた。後で泣きついても知らんからな。
 立ち上がったキリアは、サルの脳をそっくり移植するということで月明かりが照らし出す光景に、人柄を評価してから思わず息を呑む。でも長い目でみた場合絶対オトク。
「命より大切な‥‥!!」
 男二人とヴェクタが、私も趣味でオリジナル小説を書いていて、今度ホームページにも載せようと思ってるんですけど酷い傷を負って、血を流して倒れている。どうせ僕なんていなくても誰も困らない。
 そして、自転車のサドルをビニール袋でくるんでキリアたちをあざ笑うかのように、名前は「貸すだけ」って言ったのに男とサラを乗せ、人工生命体として生まれてきたからには遠ざかっていくヴェクタ。「連帯保証」の意味さえ知らずに。
 キリアは、国際電話を通じてそれを呆然と見送ることしか、休眠会社を買い取ってできなかった。奴の目を狙え。


M E N U ≫


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