リ ィ ル の 冒 険


 むかーしに書いてた原稿なのですが、どうも上手く今の「動かす力」の流れの中に組み込めなかったシーンです。
 内容が 現「動かす力」(6) と色々かぶっちゃってるんですよね。
 それにこのシーンが「無い」方が、ユーリアさんの驚き(呆れ)が伝わるかなと思いまして(笑)
 シーンとして「仲良くはしゃぐ兄弟」とかは気に入っていたのですが…。

 語ると長くなりそうなのですが、ちょこっとだけ。バート&リィル、敵にとっ捕まる → ルビアン一家の のんきな軟禁生活、って流れは、昔っからずーっと温めていて、長い間、形にしてみたくてたまらなかったシーンで(笑) 当初に想定してたのとは ちょっと違った展開になったりもしましたが、もうノリノリで書いてたというか、書いてて すっごく楽しかったです(笑)


 リィルは鍵穴から針金を引き抜くと、慎重に扉を押した。扉は音も無く滑るように動いた。
 リィルは満足そうな笑みを浮かべながら、扉を引いて、振り返った。
「な? 開いただろ?」
 それを見て、フィルはほお〜、と感心した。
「すっげえ……でかしたリィル!!」
 フィルは弟の背中をばしばし叩いて喜んだ。
 仲良くはしゃぐ兄弟のもとに、父・エニィルが近付いた。
「まだまだ甘いな、リィル。そのくらいの鍵、僕なら半分の時間で開けられるよ」
「ううう、父さん厳しい……」
「ってことは、オヤジ」
 フィルはエニィルを見た。
「開けられるのわかってて、今まで開けなかったのか?」
「だって、開けたところでどうするんだ? エルザが『向こう』にいる以上、僕達だけで勝手な行動はできないだろう」
「う……」
 フィルが言葉に詰まる。
「俺……ちょっとそのへん偵察してこようかな〜」
 リィルが軽く言うと、なに?!とフィルが顔を引きつらせた。
「何考えてんだ!! 本気かお前?」
「うん。良いでしょ、父さん?」
 リィルはエニィルに微笑む。
「う〜ん。リィルの行動力は高く評価するが……」
 エニィルは苦笑しながら考え込んだ。
「姉貴とコンタクト取りたいし、バートのお見舞いもしてきたいし。避難経路も確保しておきたいし。……ダメ?」
「…………」
 エニィルはため息をひとつついて、
「わかった。行っておいで」


 以下は、この原稿のさらに一段階前のメモ書き、会話ヴァージョン(マンガでいうネームみたいなやつ)です。
 エニィル「腹話術で『3人』いるように見せかけとけばいいんだろ?
 …って。ノリの良い父さんだ…。

 今はあまり、こういう「ネーム」(?)書いてから本文書く、ってことはしてないですね。メモ用紙に殴り書きを書き散らかしてから本文パソ打ちします。
 「殴り書き」は、様式とかきちんと決めてません。セリフの断片だったり、描写だったり、方針のメモだったり…。しかも本文に書けたらゴミ箱にポイする、本当に一時的なメモです。


(カチャ)
リィル「よっし開いた〜♪ らっくしょ〜〜♪
フィル「おおっ! でかしたリィル。
エニィル「ははっ。リィルもまだまだだな〜。
 僕だったら半分の時間で開けられるよ。
リィル「うう……父さん厳しい……
フィル「ってことは……オヤジ。
 開けられるのに開けなかったってことか?
エニィル「だって開けたところで、どうするんだ?
 エルザを置いて逃げるのか?
フィル「そ……それは……
リィル「俺、ちょっくらそのへん偵察してくるよ。
フィル「えええ?! ひとりでか?
 危険じゃないか??
リィル「大丈夫大丈夫〜〜♪
 避難経路とか確保してくるよ。
 できれば姉貴とコンタクトも取りたいし……
 あとは、バートのお見舞いかな……
エニィル「(……はあ。)
 リィルの行動力は高く評価するが……
 くれぐれも、気をつけろよ。
リィル「わかってるって。
 父さんと兄貴も、見張りが来たときのフォローよろしく。
エニィル「ああ。
 腹話術で『3人』いるように見せかけとけばいいんだろ?
リィル「さっすが父さん♪
 よし、それじゃ、行って来ます!

 *

フィル「リィル……
エニィル「……自ら捕まりに来た、か。
 つくづく、器用なコだな……
フィル「なんか……希望が見えてきたよ。
 俺達、一生この小部屋で過ごさなくてすみそうだな……
エニィル「もちろんだよ。
 時は、流れる。状況は、どんどん変わってく……
エニィル「……例え、リィルが来なかったとしても。
 僕はいつかはこの小部屋から抜け出すつもりだったよ。
エニィル「でも、リィルとバート君は、いい『キッカケ』になってくれた。
 ……フィルも、覚悟決めとくんだよ。
フィル「ああ。まかしとけ、オヤジ!
 イザってときは俺だって……!


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