夜明け前。バートは時折背後を気にしながら二人乗りの
「今のところ、追っ手は追いついてきてねーみたいだな」
バートはサラに言った。
「そうね」とサラ。
「追っ手は上手くまけたんじゃないかしら。もう大丈夫かも」
「でも、まだ気は抜けねーな。リンツまでは休みなしで飛ばすぞ」
「良いわよ。リンツに着いたらゆっくりどこかの温泉宿にでも泊まりましょう」
うきうきとサラは言った。
「……お前、わりとのん気だな。自分の命が狙われてるってのに」
バートは呆れる。
「だって、ずっと気ぃ張ってても疲れるじゃない」
地平線から、ゆっくりと太陽が姿を現し始めた。草原の真ん中を北へ延びる街道が少しずつはっきりと照らし出されていく。
「ねえバート。せっかく遠出するんだから、大精霊”
朝日に照らされた王女の横顔は輝いていた。
「……そっちが目的かよ、もしかして」
「細かいことは良いじゃない」
ピアン王国とキグリス王国の国境であるピラキア山脈には、「開かずの扉」と、大精霊”
「でも、『開かずの扉』って。誰にも開けられないって。それじゃあ大精霊”
「うーん。そうねえ……」とサラ。
「でも、例えそうだったとしても、良いのよ。伝説の、その場に行くってのが大切なんだから」
「ふーん……」
バートは気のない返事をする。とりあえず目指すはリンツの町だ。
*
リィルとキリアも、二人乗りの
リィルとキリアは運転を代わりながら北を目指した。真上にあった太陽がゆっくりと高度を下げ、あたりがだんだん薄暗くなり、そして街道が完全な闇に包まれ……、前方に、小さな木造の建物が見えてきた。「道の駅」と呼ばれる休憩所で、旅人たちが仮眠をとることができる場所だ。近くに水場もある。ここがちょうど首都とリンツの中間地点になっている。
「良いタイミングで『道の駅』……って言いたいところだけど、ここで泊まっちゃったらリンツで王女たちに追いつけなくなっちゃうわよね。でも、疲れてたら休憩にする?」
手綱を握っていたキリアは
「…………」
そろそろ運転交代の頃合なんだけどなー、と思いながら、キリアはため息をついてそのまま