エ ル ザ の 剣


 流血描写(っぽいの)があります。注意! (まあギャグオチなのですが)
 この展開は…小説版に入れたかったような…入れなくて正解だったような…。
 伏線の張り方としては気に入っていたのですけどね(笑)


 エルザの剣がリィルの胸を貫き、
  リィルの服が真っ赤に染まる。
 のを、バートは見た。

 リィルの身体が仰向けになって地面に倒れこむ。
 エルザは弟の身体からだから剣を引き抜くと、見下ろして満足そうな笑みを浮かべた。

「キャアアアア!!!」
 サラが甲高い声を上げ、膝からがくりと地面に崩れ落ちる。

「リィルっ!!!」
 キリアが叫ぶ。

(リィルが殺られた!!)
 かっ となってバートは地面を蹴った。エルザが気付いて顔を上げる。

(来たわね、バート!!)
 振り下ろされたバートの剣を、エルザは自らの剣で受け止める。
「くっ!!」
 その一撃の重さに両腕がじんじんと痺れる。
 バートの迫力に押されて、大きく後退する。バートは勢いを緩めずに突っ込んでくる。

 腰を抜かしたらしいサラは置いておき、キリアはリィルのもとに駆け寄る。
(大丈夫、精霊の力を借りれば)
 祈るように自分に言い聞かせる。
 かがみみ込み、改めて見るその出血量に気が遠くなりそうになりながら、
(優しき風の精霊よ……)
 リィルの身体に両手をかざし……
「!?」
 ……キリアは「あること」に気付いた。

(くっ、もう限界……!!)
 そう思ってエルザは、後退しながら声を張り上げる。
「アビエス!!」
 なにっ、と、バートの動きが止まる。
 エルザの呼び声に応じて、翼のはためく音が近づき……。
 赤いストレートの髪は背中に届くほどの、眼鏡をかけた異世界人――アビエス・シャフトがエルザの背後に降り立った。
「ズラかるわよアビエス!!」
 エルザがアビエスの首に飛びつく。アビエスは片手でエルザを抱き、赤い翼で高く舞い上がる。
「なんでてめーが!!!」
 バートは見上げて叫んだ。
「私ですよ、彼女をここへ連れてきたのは」
 答えるアビエス。
「……でもまさか、本当に弟さんを殺ってしまうとはね」
「うふふっ」
 エルザは妖艶な笑みを浮かべた。
「いい働きしたでしょ? 私」
「……まあ」
 アビエスが苦笑する。
「というわけで」
 エルザがバートに向かって、ひらひらと右手を振った。
「私達一旦引くから。じゃーねーバート。また会いましょ♪」
「な……」
 遠ざかってゆく二人を目で追いながら、呆然と言葉を探す。
「何がじゃーねーだっ!!!」

 × × ×

 バートはしばら呆然ぼうぜんとして動けなかった。
 信じられないことが次々と……
(エルザ姉ちゃんがリィルを刺した!!)
(俺もカッとなって思わず姉ちゃんに剣を――)
 そして、あのまま怒りに任せて……エルザを斬ってしまっていたのだろうか……
 バートは剣をさやにおさめ、振り返る。
 キリアがリィルのそばかがんでいる。
 サラはもっと遠くで座り込んでいる。というか手をついて必死に立とうとしている。――腰が抜けてしまったらしい。
 バートは大股でリィルとキリアに近づく。
「キリアっ」
「ん……大丈夫よリィルは。生きてる、みたい」
 みたいってのは何だ、と言おうとしたところで、血(まみ)れのリィルがむくりと上半身を起こした。

「……治るの早いな」
 ぽつりと、バート。

「……くっくっく……」
 リィルの顔がゆがむ。
「ははは……あっはっは……あ〜っはっはっは……」
 身体を折り曲げ、腹を抱えて、苦しそうにリィルが笑う。服は真っ赤に染まったままで、かなり異様な光景だった。

「おいキリア」
 見かねてバートはキリアを突っつく。
「アイツついに……」
「……刺されてなかったのよ、リィルは」
 キリアはリィルを見やって、ため息をついた。
「あの赤いのも多分、トマトソースかなんかで……」
「……なにぃーーー?!!」

 ひとり状況がつかめないサラは遠くでただ おたおた するだけだった。


 …腰を抜かしたサラが うっかりツボりました(笑)


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