背中合わせの幻想 〜 予告編 〜


 せめて、四大精霊の力がどういうものなのか見極めたい。そのためにバートとキリアは二人だけでガルディアの本拠地に乗り込むつもりでいる。もちろん、機会があればリィルとサラも助け出す。
「覚悟は、できてるな?」
 バートはキリアに確認する。
「とっくの昔にね」
 キリアはバートに答える。
「じゃあ」
「行きましょう」
 バートとキリアはいつもの四人乗りの乗用陸鳥《ヴェクタ》に乗って南へ駆け出す。




「だから、俺は進んでみようと思う」




「……それが、ガルディア軍の、望みなんですか?」
「いいや」
「これは、俺の、望み」




「直接渡されたわけではありません。黙って置いていったみたいなんです。最初は忘れ物だと思っていました。しかし、今となって思えば、私たちに読ませるために、置いていったのですね。……このような事態に備えて」




「フィル兄の剣? ……”ケイオス”で無くしたはずなのに」




「リィルって、サラのこと好きだったんじゃないかな……」




「例の黒い砂漠――”ケイオス”のことなんだが」
「ああ」
「伝説によると、全てを呑み込んで成長する”混沌”、二千年前は、大陸のほとんど全てを呑み込んだって」
「みたいだな。俺もリスティルさんから聞いた」
「北上してる、らしいんだ」




「長い戦いだったけれど……これで全てが、戦いも、『四大精霊の伝説』も、終わるんだ」




「ユーリア」
 ルトがユーリアの肩を叩いた。
「……大丈夫か?」
「大丈夫」
 ユーリアはしっかりとした口調で答えた。
「ちょっと固まっちゃってただけ。聞いてはいたけど、わかってはいたけど、目の当たりにしちゃうと、さすがにね……」
「これからどうなるかなんて、誰にもわからないものさ。……いつだって、な」
 とルトは言う。
「そうね」
「だから希望はある。いつだって」
「ありがとうルト。……ごめん、私ばっかりこんなで。ルトだってエニィルのことがあるのにね」




「望みが叶ったってわけか。全く、めでたいことじゃねーか……」
「望みは、まだ、叶っていない」




「バートの望みは、何?」




(我は……一応、『ガルディアの王』と、呼ばれておったな)




 ――嫌だ、と思った。死ぬのは怖い。死にたくない。心残りが有り過ぎる。サラのこと、リィルのこと、おじいちゃんのこと、リスティルのこと……。バートだって。もし自分がここで死んだら、バートは……きっと、苦しむ。自分の所為で。




「どういう意味ですか」
「貴方は一体、何者なんですか……っていう、意味です」




(この苦しみは、痛みは……その、罰、なの、か……)




「ちくしょう……なんで今更……!」




「泣ーかした」
「!」





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