ま た 、会 え る の ? ( 5 )


「俺、今から首都に行く。止めても無駄だぜ」
 街外れのヴェクタ乗り場まで一気に走って、バートはリィルに言った。本当はリィルをまくくらいの勢いで走ってきたのだったが、彼は良く追いすがってきた。
「言うと……思ったよ……」
 リィルはバートの後ろで、まだ少し息を切らせていた。
「母親さんを……助けに?」
「イヤ、それはついで。どっちかってーと、父親をブチのめしに」
「……やっぱり」
 リィルがふうとため息をつくのが聞こえた。
「じゃっ、そういうわけで、キリアたちによろしく」
 言い捨てて、振り向かずにバートは歩き出す。
「待って」後ろからリィルに腕をつかまれた。
「なんだよ、やっぱり止めるのかよ」
 バートはリィルを振りほどこうとする。リィルは掴んだ腕に力を込めて、きっぱりと言ってきた。
「俺も、首都に行く」
「……え」
 ようやくバートはリィルを振り返った。リィルはバートを真っ直ぐに見つめていた。
「俺も、首都にヤボ用があってさ」
 と、リィルは言う。
「ヤボ用?」
「うん。――俺も、いい加減そろそろ、真面目に探さなくちゃって思って」
「…………」
 バートは少し考えてから口を開いた。
「……お前の父ちゃんたちを、か?」
「ん」リィルはうなずいた。
「じゃあ、まさか……」とバートは言う。
「お前の父ちゃんたちも、ピアン首都にいる、ってことなのか?」
「俺のカンではね」
 と、リィルは答えた。

 *

 キリアとリネッタとウィンズムは、『隠れ家』でバートとリィルの帰りを待っていた。二人はなかなか戻ってこなかった。昼を回ったので三人で食事を取りに食堂に行き、――日がだいぶ傾いても、二人は戻って来なかった。
 そして、夕方。一通の伝言が『隠れ家』のキリアの元に届けられた。その伝言を握り締めて、キリアは夕日で赤く染まった大通りを駆けていた。
(ウソでしょう?!)
 キリアは信じられなかった。信じたくなかった。
(無茶よ! 無謀すぎる! たった二人で行っちゃうなんて……! 異世界軍団――ガルディア軍は、サウスポートから全軍あげて首都に攻め込んできたって……!)
 靴音を響かせながら、キリアは南に向かって駆けた。
(どうして私に一言の相談もなく!)
 その答えはわかっていた。それは、きっと、私がそんなの許さないから。もしくは「私も行く」って言って、聞かないだろうから。
(アイツらにとっての「私」って……)
 右からの赤い光が、キリアの右頬を照らしていた。

『キリア、サラ、リネッタ、そしてウィンズムへ。
 今まで、色々お世話になりました。
 突然で悪いんだけど、俺とバートは、二人でピアン首都に行くことにしました。
 俺もバートも、それぞれの目的のために。
 俺たちの決意は固いから。
 だから、絶対についてこないように。止めないように』

 キリアは祈るような気持ちで乗用陸鳥ヴェクタ乗り場に駆け込んだ。
 大人しく繋がれているヴェクタたちが、夕日で赤く染まりながら、キリアを出迎えてくれた。
 しかし、
 黒髪の少年と、茶髪の少年の姿は、
 もう、どこにも見えなかった。
 キリアはふらふらとその場に座り込んだ。

(私たちの旅は……)
 決して楽しいことばかりではなかったけれど。
(これで、もう、終わりなの……?)
 まさか、こんな形で、突然彼らと別れることになるなんて、思ってもみなかったから……。
(彼らには……また、会えるの?)
 生暖かい風が、キリアの髪を揺らして、吹き抜けていった。



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