ま た 、会 え る の ? ( 2 )


 バートたち五人は朝リンツの町に到着した。五人は町の入口に立っていたピアン兵に話を聞き、まずはリンツ中央医院に向かった。町の中心部にある、町で一番大きな医院である。朝なのに人の出入りはけっこうあった。
「あまり大勢で入ることないよな。俺は外で待ってる」
 とリィルが言うと、キリアとリネッタも同意した。バートは自分も遠慮すべきなのかと思ったが、
「バートは行くべき」とリィルに言われてしまった。
 バートとサラはピアン兵に案内され、最上階にある王の病室に通された。
 王との謁見を終え、バートはひとりで中央医院を出た。通りの端に座り込んで何やら話し込んでいたリィルとキリアとリネッタがこちらに気付いて、歩み寄ってきた。
「お帰り、バート」とリィルが声をかけてきた。
「どうだった? 王の様子は」
「ああ、ピアン王はわりと元気そうだったぜ。口調もしっかりしてたし、いつもの王だった」
 とバートは答える。
「ベッドの中にいたけどな。さすがにまだ歩き回るのは辛いらしくて」
「そうか……。でも、大丈夫そうみたいだね。安心したよ」
 ほっとしたようにリィルは言った。
「サラはまだ王のところにいるの?」とキリアが尋ねてくる。
「ああ、サラは……倒れた」
「「えええっ」」
 キリアとリネッタの声が重なった。
「やっぱ徹夜強行軍の無理が祟ったんだろうな。王に会って気が抜けたみたいで……今、王の隣の部屋に寝かされてる」
 サラが倒れたことはバートにとって少々意外だった。医院に入るときまで、サラは全く疲れを感じさせない素振りだったのだ。それにサラは「強い」から、こうやってばったり倒れることなんかないと、勝手に思い込んでいたのだ。今回のことは、サラにとって、よほど……こたえたのだろうか。
「あと、バート。……父親さんのことは、聞けた?」
 リィルが小声で尋ねてきた。バートは首を振った。
「父親については、誰にも、何も言われなかった。王にも、ピアン兵にも。ってことは……、噂にもなってないくらいだから、出てきてなかった……って、ことなのかな……」
 バートは空を見上げてため息をついた。少しだけほっとしている自分がいた。本当は、こんな事態でそんなこと考えてはいけないのだろうけど。でも、例えばもし父親がピアン王に堂々と刃を向けていたとしたら――それは、本当に最悪の事態だと言えるから。
「ユーリアさんについては?」
 再びリィルが尋ねてくる。
「いや、そっちもさっぱり。母親のことは自分で探すよ。リンツのどっかにいるだろ、きっと」
「そっか。バートの実家って首都なんだよね。お母さんの行方がわからないってこと……?」
 遠慮がちにリネッタが尋ねてくる。
「ああ。リネッタも知り合い探すんだよな。一緒に探すか」
「そうだね」リネッタはうなずいた。
「リィルも家族を探すんでしょ」とキリアがリィルに言う。
「この前はあまりゆっくり滞在できなかったけど、今度はじっくり探せるわね」
「この前のときもキリアが寝てる間に探したよ」
 リィルは微妙な笑顔をキリアに向けた。
「あ。そうだったの……」
「……俺の家族は多分……いや、うん。バート、リネさん、一緒に探そう」

 *

 四人はリンツの商店街を歩いていた。キリアとリネッタはサラのお見舞いに行きたがっていたが、バートは「今じゃなくて、落ち着いてからのほうが良いと思う」と言った。
「さて、バートのお母さんと、ウィンズム君と、エニィルさんたちを探すとして、」
 キリアはバートとリィルとリネッタに声をかけた。
「みんな大丈夫? 疲れてない? 先に宿とって休む?」
「わたしは平気」とリネッタは言った。
「明るいうちに休んじゃうの勿体無いもん。疲れてるのはみんなのほう……特にキリアじゃない?」
「私も大丈夫よ」とキリアは言った。
「いつかのときと違って交代で寝ることできたし。今も別に眠くはないし」
「俺も大丈夫」
「お前、さっきまで寝てたからだろ」
 バートはリィルに言ってやった。しかし、夜中にリィルに運転させることは自殺行為に等しいので、バートは昼にリィルに運転させて眠ることにしていた。なので、バートにとっては徹夜明けの朝なのだが、昼間に良く寝ていたので、特に疲労は感じていなかった。
 四人で通りを歩きながら、ふと思い出したように、リィルが口を開いた。
「そういや、キリア。ひとつ聞きたいことがあったんだけど」
「ん? 何――」
「あれっ? アイツ……」
 キリアの言葉にリネッタの声が重なった。リネッタは立ち止まって、通りのある一点を指さしていた。
「見つかったの?」キリアがリネッタに尋ねる。
「ううん、ウィンズムじゃないんだけど」
「げっ、まさか」
 キリアはリネッタの指す方向を見て顔をしかめた。対照的に、リネッタは懐かしさに自然と笑顔まで浮かべて駆け出していた。



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