「本当に一人で大丈夫なんですか?」 と、リスティルが尋ねてくる。いつも通りの穏やかな口調で、キリアの心を確かめるように。 「うん、大丈夫よ、一人で」とキリアは答える。 「だからリスティルは、おじいちゃんのことお願い」 「わかりました」 髪の長い青年はしっかりとうなずいた。 キリアは一人「塔」を出て、国境の向こうの旅に出る。南の隣国のピアン首都までの旅は完全な一人旅となる。初めての一人での長旅。不安よりも、 (ずっと塔を出たいって思ってた) キリアは乗用陸鳥《ヴェクタ》の背で大きく伸びをする。今回の旅はかなりの長旅になるだろう。空は青くて広い。キグリスの大草原を南に街道が延びている。振り返れば小さく遠ざかっていく塔が見える……。
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